トイレが近くて困る…頻尿とは
頻尿とは、トイレが近い、トイレに行く回数が多いといった症状を指します。1日の間にトイレに行く回数が8回以上ある状態を頻尿と呼びます。しかし、1日の排尿回数が8回以下の場合でもトイレが近いと思うなら頻尿と言えるので、排尿回数だけで頻尿と決めることができません。また、40歳以上の方で約4,500万人が夜寝ている際に1回以上トイレに行くという報告もありますが、若い世代の方は夜トイレに行くことはほとんどないとされているため、トイレが近くなる時間も個人差があると言えます。
夜寝ている時にトイレに2回以上行く状態は夜間頻尿と呼ばれます。加齢によってこの症状は次第に多くなり、日中にも影響を及ぼす可能性が高くなります。夜間頻尿によって睡眠の質が低下したり、夜トイレに行く途中に転んで怪我したりする恐れもあります。
頻尿はストレスから?
頻尿を起こす原因
利尿作用のあるお薬や飲み物
尿の排出を促すお薬や水分を多く摂取すると尿量が増加し、頻尿に繋がります。例えば、コーヒー、紅茶、お酒には利尿作用があるため、飲み過ぎると体内で尿が多く作られ、トイレが近くなる可能性があります。トイレに行く回数を減らしたい場合、利尿作用のある飲み物を飲み過ぎないようにしてください。
精神的なストレスや不安
精神的なストレスや不安などからトイレに行きたくなるという経験は誰でも一度はあるでしょう。トイレに行くのが難しい場合も尿意を感じる可能性がありますが、いずれもさほど気にする必要はありません。日常生活に影響が出ているという方は医師に相談して治療を受ければ、症状は改善します。
膀胱に溜められる尿量の低下
膀胱の容量が150~200ml以下になるまで低下すると、尿を少ししか溜められないので頻尿になります。膀胱が小さくなっても1日の尿量に変化がなければ、頻繁に尿意を感じます。膀胱の容量が低下するのは、炎症性疾患(膀胱炎など)、間質性膀胱炎、過活動膀胱などが原因として挙げられます。
また、膀胱の容量は変わっていないですが溜められる量が少なくなることがあります。これは、前立腺肥大症や神経因性膀胱によって症状が現れている可能性があります。頻尿は膀胱がんの症状でも起きることがあるので注意しなければいけません。血尿が膀胱がんの主な症状ですが、頻尿を訴える方もいるため、慎重に病気を見極めることが大切です。
残尿が多い
残尿は排尿したのに膀胱の中に尿がある状態を指します。このような排尿障害(尿排尿障害)は、前立腺肥大症などが原因とされています。また、腰部椎間板ヘルニア、糖尿病、直腸がんや子宮がんの手術などで膀胱の神経に異常が起こることで、排尿のコントロールがうまくできなくなり、排尿障害(尿排尿障害)が起こることもあります。膀胱の中に尿が残っている場合、新しく作られる尿を溜めておく場所が少なくなってしまうので、頻尿に繋がります。
頻尿になる病気や疾患
過活動膀胱
急に尿意を感じ、膀胱の中に十分に尿が溜まってはいないのですが、何度もトイレに行ってしまう状態です。自律神経の乱れ、加齢、膀胱の知覚過敏などいくつかの要因が積み重なることで症状が現れるとされています。また、病気の影響によって起こるケースもあります。症状は頻尿だけでなく、トイレが間に合わずに漏れてしまったり、急にトイレに行きたくなったり、どの症状も日常生活に影響を与える可能性があります。気になる症状がある方は、早めに当院を受診ください。
前立腺肥大症
男性の前立腺は膀胱の下に位置し、尿道を取り囲んでいます。前立腺は年を取るにつれて大きくなりやすく、頻尿といった排尿トラブルが増える傾向にあります。例えば、途中で尿が出なくなる、尿の出が弱い、残尿感、力まないと尿を出せないなどの症状が現れ、さらに酷くなった場合、尿閉(排尿できない状態)となる場合もあるため注意が必要です。また、症状の原因が前立腺がんの可能性もあります。思い当たる症状がある方は、病院で必要な検査を受けることをお勧めします。
骨盤臓器脱(性器脱)
女性の膀胱、子宮、直腸は、骨盤底筋群(筋肉・靭帯・膜から構成されています)に支えられ、本来の位置に固定されています。しかし、女性は出産や妊娠で体に大きな負荷がかかったり、年を取るにつれて骨盤底筋群の筋力が衰えたりすることで、膀胱、子宮、直腸を支えられなくなり、本来の位置から下がってしまう骨盤臓器脱が起こります。発症すると、尿漏れ、頻尿、排尿困難、立つと急にトイレに行きたくなるといった症状が現れます。さらに症状が悪化した場合、膣から臓器が出てくるケースもあります。これらの症状は、便秘気味の方や肥満の方の方が発症する可能性が高いです。手術や保存療法などで治療可能な病気のため、思い当たる方は早めに当院までご連絡ください。
子宮筋腫
子宮筋腫は子宮に発生する良性の腫瘍です。これが周りの臓器を圧迫することで、トイレに行く回数が増加する場合があります。頻尿の他に生理の際の出血の増加、生理痛が強くなるといった症状が現れ、さらに流産や不妊のリスクが上がります。
膀胱がん
膀胱で尿は作られ、尿管を通って排泄されます。また、膀胱は一時的に尿を溜めておくことができる場所でもあります。膀胱は、移行上皮(尿路上皮)という粘膜で中が覆われており、この移行上皮の細胞にがんができることで膀胱がんとなります。膀胱がんは「表在性膀胱がん」と「浸潤性膀胱がん」の2種類に分けられます。表在性膀胱がんは、粘膜の内側にできるがんで、転移する可能性は低いのですが、再発するリスクが高いとされています。浸潤性膀胱がんは、悪性度が高いものが多いので、転移するリスクが高いがんとされています。発症すると血尿が起こるので、尿に血尿が混ざっていて異常に気づく場合もありますが、尿検査で血尿が発見されて早期発見できるケースもあります。思い当たる症状がある方は速やかに医師に相談しましょう。
糖尿病
長い間、血糖値が高い状態が続くと、大きな負荷が血管にかかるため動脈硬化が進みやすくなります。さらに、高血糖により自律神経障害が起き、排尿障害を来すこともあります。また高血糖は頻尿や異常なのどの渇き、多尿を引き起こすので、血糖値を管理して基準値に収めることが大切です。生活習慣を見直し、適切な治療を根気強く続けていきましょう。
頻尿と糖尿病の関係性
糖尿病は、血液に含まれるブドウ糖の量が多くなり、その状態が慢性化すると発症します。糖尿病の症状の1つにのどの渇きがあります。これは、高血糖になると尿量が増加することや、ブドウ糖が血液の中で増えすぎたため、薄めようと体が働き、水分を欲するため起こります。糖尿病が進んで自律神経に異常が起き、排尿の制御がうまくいかなくなることで、頻尿や夜間頻尿の原因になる可能性もあります。
頻尿の治し方や対処法
放置せずに医師に相談する
様々な要因によって頻尿が引き起こされるため、医師に相談して適切な治療を受ける必要があります。トイレに行く回数が多いと、生活にも影響を及ぼすリスクが高まり、子宮筋腫や糖尿病、膀胱炎などの病気の症状で起こっている可能性もあるので、放置せずに受診することをお勧めいたします。
頻尿の原因として最も多い過活動膀胱に関しては、抗コリン薬やβ3作動薬という薬剤を使用します。抗コリン薬は以前からよく使用されてきた薬剤で、膀胱の容量を大きくして尿をたくさん貯められるようにします。効果は高いですが、口が乾いたり便秘になったりすることがあります。β3作動薬は最近になり発売された薬剤で、口が乾いたり便秘になったりという副作用は起こりにくいです。ただし心拍数を増加させる作用があり、心臓に負担をかけることがあるため、心不全の患者さんには慎重に使用しなければなりません。
日常生活でできる頻尿対策
病院を受診する以外に、生活の中でもできる対処法がありますので、下記でご紹介いたします。
利尿作用がある飲み物の摂りすぎに注意する
お茶、コーヒー、ビールなどには利尿作用があるため、飲み過ぎると頻尿に繋がります。寝る前にこれらを飲み過ぎないように心がけると、夜間にトイレに行く回数が減る可能性があります。
ストレスを発散する
精神的なストレスや不安を感じたら、軽く運動したり気分転換したりして、ストレスを溜めないようにしましょう。また、趣味の時間に没頭する、大声を出してストレス発散するといったこともお勧めです。
外出時はトイレがどこにあるか確認する
外出してトイレがどこにあるか分からなくなることで、余計にトイレに行きたくなる可能性があります。トイレの位置を確認し、すぐに行けるようにしておきましょう。
女性は骨盤底筋の強化が有効です
女性は骨盤底筋を強化すると、尿道を閉じる筋力の向上に繋がり、頻尿の改善が期待できます。膣や肛門を閉めたり緩めたりを繰り返し、骨盤底筋を強化しましょう。